天気輪の柱
銀河鉄道の夜の始まり、ジョバンニが乗車した天気輪の柱。
宮沢賢治の創作語ですが、東北地方の天候を祈る柱や死者を弔う柱などをモデルとする説があります…が、8月の花巻の星空には、北天の北極星の下にキリン座の柱がそびえています。
おや?天キリンの柱…!?
はくちょう座
『銀河鉄道の夜』は銀河の中の2つの十字架の間の物語です。
始まりの白鳥区にあるのは「北十字」。
白鳥座の嘴にあたる星「アルビレオ」は美しい二重星で、とても印象的な描写をされています。
「眼も覚めるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きな2つのすきとおった球が輪になってしずかにくるくるとまわっておりました。」
サファイアとトパーズが回っている…なんと美しい…
こと座とわし座
台詞にだけに登場の織姫と彦星の星座です。
鳥を獲る人や沈没船の女の子のカササギのシーン。
ジョバンニが悲しくなっているのもこのあたり。
男女の心模様を反映させているのかしら?
さそり座
「赤」の美しさを表現する最も美しい文章ではないでしょうか。
「ルビーよりも赤く透き通り、リチウムよりも美しく酔ったようになってその火は燃えているのでした。」
ミュージアムに勤めていた時、鉱物の解説をしながら感じたのは、人類の「赤」という色への特別な想いであり、赤い石の価値でした。血の色そのものである赤い石は、同質の鉱物の中でも特別高価で、人はそこに病の治癒能力を求めたり、戦場に行く折に命の担保を求め勝利の象徴としてきたのです。
銀河の中でひときわ美しい赤い星「アンタレス」を持つのがさそり座です。
「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせば出来るんだろう。」
ここで燃やしているのはサソリの命であり、美しい心です。サソリの悲しく美しい物語に、乗客と読者の心が同調します。
ケンタウルス座
「ケンタウルス、露をふらせ」
物語の終盤で出てくるケンタウルス座。
そういえば、物語の最初に今日地上ではケンタウルス祭でしたね。
私は岩手で生まれ育っていますが、ケンタウルス祭というのは無く、架空の物語でこのお祭りは一体どういう設定なのだろう?と長らく謎に思っているお祭りなのです。
カラスウリの青い灯りを川に流したり、青いアスパラガスの葉で飾られた星座早見図の周りを宝石や銅の人馬が回っているショーウィンドーもありました。
この星祭りは沢山の青い星で構成されたケンタウルス座を表しているのですね。そして、そのケンタウルスの脚の間にあるのが南十字星です。
この星座が南の十字架であり、ほとんど乗客が下車した天上の駅です。その足元には石炭袋と言われた黒い孔があります。全天88星座のなかでもっとも小さい星座です。
岩手から南十字星は見ることができませんが、私は南十字星の存在を知ってからずっと見たいと思っていました。賢治さんも見たかったんじゃないかな…。
北斗七星とカシオペヤ座
日本の理科教育に欠かせない北極星を探す目印の星座。